谷川 俊太郎
詩人

「あなたの最期の『七日間』」または、“あなたが最期にしておきたい、おかねばという願い”

私が願う最期の『七日間』

一日目
アルプスの麓の高原へ、好きなひとと二人で冷えたシャンパンの小瓶とサンドイッチ持参で出かけて、夕焼けを夜になるまでゆっくり見る。

二日目
小さなホールでの室内楽のコンサートを聴く。曲目に注文はない。

三日目
銀行口座の残高を確かめて、残った身内が文句を言わない程度の金額を、どことどこに贈るか考えて決める。

四日目
何もしないで自分を観察しながらうちでゴロゴロしている。

五日目
海を一望できる岬で、海を見ながらアトランダムに思い出に耽る。

六日目
一日目に一緒にアルプスの麓に行ったひとと熱気球に乗る。

七日目
肉体なしでの将来の計画を立てる。