残間 里江子
プロデューサー

楽曲の感想

「人の死」を歌うのはとても難しいと思う。
アプローチをちょっと間違えると、
聴きたくない曲になってしまうから。
でも、クミコさんの歌う「死」は、哀しいだけでなく、
喪失感の向こう側にある、
希望の兆しをも感じさせてくれるから、
何度も聴きたくなる。

この歌を初めて聴いた時、
「私もこんな結婚がしたかったなぁ」と、思った。
そう出来なかったのは、
私の若さゆえの未熟さだったのだけど、
でもあの勢いも、
若さゆえの強さだったのかもしれないと思った。
風の便りに、
かつて夫だった人が先頃病気で旅立ったと聞いて、
「妻が願った最期の『七日間』」を、
昔日の私の姿と重ねながら聴いていたら、
あたたかい涙が頬を伝った。

「あなたの最期の『七日間』」または、“あなたが最期にしておきたい、おかねばという願い”

「最期の七日間」が、
一応は食べて、
動けることと想定してのことですが………。

1日目
生きている間、
聞きたくても聞けなかったことを、
(相手の記憶がまだ定かだったら)
思い切って尋ねます。
いつしか疎遠になった友人には、
「私、何かひどいことをした?」と聞き、
最後の恋だと思っていた人には、
「本当に私のこと、好きだったの?」と聞いてみる、
………等々。

2日目
あとに残ったら「恥ずかしいもの」を捨てます。
折々書いていた備忘録(短い日記やメモなど)には、
多分にネガティブなことが書いてあるので、
きれいさっぱりシュレッダーにかけます。

3日目
私が病気になっても、
「あなたは大丈夫!そんなに簡単には死なないから」と言う、
シニカルな息子を、私の死後、何とか泣かせてやりたいと思って、
5年ほど前に、息子にまつわる写真や手紙や思い出の品々を、
最低5回は泣くであろう順に並べて「編集」した、
「死んだら見てねbox」の最終確認をします。

4日目
ほどなく私が入るお墓の清掃と、
お寺の住職に私の希望する戒名を伝え、
葬儀のリクエストをしておきます。
家族葬でも密葬でもいいけれど、
棺の形や色と祭壇を飾る花は選んでおきたい。
棺の色は黒。花は真っ白。

5日目
時には懇願、時には説得、時には教唆………と、
私の仕事は「人と話すこと」だった気がするので、
私の人生の最後を飾り、
親しい友だちに「ありがとう!あの世で待っているわね」と、
かけられるだけ電話をかける。

6日目
約60年間、太るのでなるべく食べまいと、
我慢していた白米の炊きたて(つまりアツアツご飯)を 
たらふく食べる。
おかずは思い切り塩辛い、
古漬たくわんと古漬きゅうり。

7日目
亡き両親を思い、
自分の人生を独りで静かに振り返る。