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2011年12月10日

「ダルマが困ってる」

一ヶ月に一回、こうしてこのコラムを書かせていただいている。ということは、一年に十二回。紙面から切り取られたコラム欄を重ねてみても、あまりに薄い。十二回というのはこの程度の厚さ、いいかえれば、一年というのはまさしくこの「薄さ」に他ならない。

今年の初め、新年のお祝いにと大きなダルマをいただいた。「目」の入れ方を記した説明書も添えてある。まず黒々と片目を入れ「願い事」をなるべく具体的に思い浮かべ、心を込めて、その実現を祈念し、折に触れてはそのダルマの頭を撫で暮らす。そうこうするうち「願い事」が叶う気配があった時に、もう片方の目を入れる。

るほど。元来こうした「縁起もの」には、とんとご縁のなかった私だったが、目の前のダルマをよくよく見ればなかなかに可愛い。可愛い上にご利益もあるという。そんなウマイ話があるのか、半信半疑のまま、それでも、部屋の隅に置き、その頭を撫でた。

そして、あの大震災が起きた。

個人の「願い事」など、どこかへ吹っ飛んでしまった。私自身が石巻で被災したこともあるが、それ以上に、いろんなコトや、いろんなモノを、すべて飲み込み「無」に変えてしまう自然の力の前に、もう「願い事」など、チリひとつの意味もなかった。

あれからそろそろ九ヶ月。おそらく日本国中の人が深い傷を負った今年も終わろうとしている。

でっかいダルマは、まだ部屋の隅にいる。掃除の時には少しジャマだが捨てる気にもなれない。私の「願い事」は消滅し、「願い事」をされないダルマは、手持ち無沙汰だ。これからどうしよう、これからどうなっていくんだろう。片目のダルマの赤い顔が、そう私に尋ねている。