「陽水さん」
陽水さん、好きです。
この国のミュージシャンで一番好きです。
ですから、この間中やっていた「SONGS」全部見ました。
何がいいって、このとろとろとした不思議なありよう。
口を開けばホントだかウソだかわかんない。
唄ってもホントだかウソだかわかんない。
ホントでもウソでもいいじゃない、って気がしてくる。
きっちり言い切っちゃう人がもてはやされる世の中、
それってちょっと危険だよね、って思う時、
陽水さん、示してます、オトナのありよう。
ホントとウソの間で生きる陽水さんですが、
でもホントなのは、その歌声。
昔から変わらぬ美しさ、なまめかしさ。
それとびっくりするのが記憶力。
あの難しい言葉たち唄うのに、何にも見てない。
そりゃ、自分で作ったんだからっていわれそうだけど、
アンチョコシンガーソングライターたくさんいます。
いつだったか初めて陽水さんのステージ見て、
膨大な言葉をぐいぐいと唄うの見て、
でもどこにもアンチョコなさそうで。
いやいやそんなはずはと、疑って。
後日、星勝さんにお会いしたので、私聞きました。
「歌詞見てないんですか?」
「見てませんね」
ひやああああああ。
覚悟が見えました。
ホントが見えました。
陽水さんの言葉って覚えるの難しい。
「少年時代」なんてあっちとこっちの言葉が
行ったり来たり。
どういう基準でこっちがあっちで、あっちがこっちか、
聞いてみたいくらい。
でも基準あるんですね、陽水さんには。
それも陽水さんのホントなんでしょう。
陽水さんがすごいのはスケベなとこでしょう。
こんなに高度なスケベ歌を作れる人はいない。
ましてあのスケベな声で唄うんですから。
もう参ります。
こういうスケベセンスがわかる人はステキです。
こんな人が多い国はきっとステキです。
でも陽水さん、もちろんスケベだけじゃない。
「最後のニュース」なんて歌作っちゃう。
わけのわからん世界と社会と自分と。
全部まるごと歌にしちゃう。
禁じ手ナシな全方位な陽水さん。
陽水さんの周りにはいつも透明バリアがあるようです。
これを行ったり来たりできる人は、誰もいなくて。
ただ自身が、そこで深い息をしているような。
陽水さん、どこまでもどこまでも孤高です。
だから陽水さん、好きです。