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クミコ - ココロの扉をたたくウタ

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2009年11月8日

「声」

昨夜「グレコ」に行った。
ジュリエット・グレコ。
まだ20代の頃、初めて聴いた時、ただその腰の辺りを見ていた。
黒の衣装のそのあたりに鉄板が入っているようで。
ああ、この人はカラダの不自由な人なのだと思った。
誰かにそのことを聞こうにも、誰もいない。
シャンソンとは遠い人間だった。
そして怖かった。
姿も声も、ただ怖かった。

人間は時を重ねれば、変わる。
根無し草みたいな私だって、少しは変わる。
そう思って迷っていたチケットを取った。
やっぱり怖かった。
姿も声もやっぱり怖かった。
メロディがわからない歌はなお怖かった。

天下のジュリエット・グレコである。
それを何たることか。
やはりこれからシャンソンを生きるのは難しそうだ。

でも、コラ・ヴォケールを思った。
シャンソンは怖いよと恐れをなしていた私、
まあまあと人に誘われ恐る恐る行ったコンサート。
一曲目から涙が伝った。
言葉は言葉を越えていた。
ただ感情が、それを支えるにもっとも的確な声で唄われた。
これって「歌」なの、シャンソンなの。
いえいえ、ただの人間の感情です。
普通に生きる普通の普遍な人間の感情です。

どちらも同じようなシンプルなステージ。
スタンドマイクに表情豊かな両手。
何が違うのか。
それは「声」そのもの。
優しく、切なく、儚く、でも凛と透き通る。
そんな声好きですわ、私やっぱり。
柔よく剛を制すってとこですか。

でも「グレコ」、82才。
80才まで唄えればなんて私、なさけない。
この長丁場、「声」、大切にしなけりゃ。