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クミコ - ココロの扉をたたくウタ

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2000年10月10日

TR放送、ずいぶんキンチョーしているなあと思いながら、
翌朝、札幌へ。

同行者。支配人、モギリ、堀越さん、東芝の廿楽さん。
本来はこのメンバーに、松本さんと、美緒さん。
おいしいもん食べてなんていってたのに。

仕方がない。
あやまりとおす。

中田さんという大地のような豪快女性DJの方と残念あいながら
とりあえずFM終了。
北海道新聞の取材も、またとりあえず終了。

MIX2000とかかれた赤いカードを首に下げたヒトがいきかう。
何が何だかわからないまま私も首にかける。

まったく、わかっていないことがわかる。
札幌の街並みも。
あちこち迷う。
整然としているせいらしい。
どの道路も同じように広いので、どこにいるのかわからない。
キチンとしたものが、向いていないことだけがわかる。

翌日、moon soonというライヴハウス。
お客をコケさせるために作った、と思える設計の店内。
案の定、一足おくれてやってきた上條さん、頭をぶつける。
支配人、話の途中消える。
うしろに転がったらしい。

30分という持ち時間。
やっとこれからという6曲で終了。
やはり、何もわかっていないことがわかる。

風待詩民の何人かがかけつけてきてくれている。
そこだけがあったかい。

その翌日、Blues Alley。
エレピに変わったものの、なかなかいい雰囲気。
思いがけずアンコールがきたのでローバイ。
うれしいので「接吻」を唄う。

ああ、もっとラクに、楽しいライヴをやりたいと思う。
体中の鎖が重い。
心が羽ばたいていない。
もっともっと自由になるには、どうしたらいいんだろう。
わからないことをわからないっていうことなんだろうか。
ワカラナイ。

東京に戻ると雨が降っていた。

2000年10月16日

先週、二日間初台でリハーサル。
気持ちがまだ重たくて、翔びきれない言葉が多く、苦しい。
その次の日、東芝のコンベンション。
コンディションは心身ともにサイテーなのに
なぜか急に元気になる。
いいかげんにしろ!と私の中のナニカが怒ったらしい。

松本さんと慶一さんのコメントがビデオで流され
幕が上がるとお客さんがいっぱい。
自分のコンサートでもないのにうれしくなる。
「情熱」のあとMC、そして「接吻」。
MCは基本的にヤバンでゾンザイ。
ああ、また「私」になったなあ、とうれしくなる。
もう、何といわれたっていいや。

今日から三日間、場所をうつして新宿でリハーサル。
詞だってまちがえちゃうかもしれないし、
メロディーだってとんじゃうかもしれない。
すべて水もの。
ココロだけ伝えたい。
生きてるものを唄いたい。

では、行ってまいります。

2000年10月23日

泣くんじゃないかと思ってた。
でも、泣かなかった。

私は、よくよくステージで泣かないオンナらしい。
家でコツコツ練習している時には、あんなに涙がでるのに。
きっと、曲の数だけ涙の量があって、そのぶんは
リハーサルまでで出きってしまうんだろう。

パブリックシアターの入口も知らなかった。
ロビーも、打ち上げの乾杯の時 まで知らなかった。
知っているのは、楽屋からステージまでの通路と、
ステージの上から見る客席だけ。
そこに、たくさんの人が来てくれた。
ありがたいこと。
二階も三階もあるなんて。
どうしたら「想い」が伝えられるんだろう。
どうしても、つたえなくっちゃ。

リハーサルは計五日。
「通し」を何回もできた。
だんだん「フ」におちていく。
いい感じ。
詞と曲がなじんでいく。
「想い」が入れられる余地ができていく。
もう失敗はないと、思えるようになっている。

当日、思わぬアクシデントで楽屋で寝ている。
起きられない。
届いたクスリと、あったかいマッサージで元気になる。
また、ヒトに助けられる。

どれだけ、こうして助けられているんだろう。
いろんなヒトにいろんな形で。
名前を挙げていたらキリがない。
もう、ひとくくりでいってしまおう。

本当に、皆さん、ありがとう。
「愛」ってもしかしたら、こういうことかもしれないって、
思います。
ちょっと、恥ずかしいけど、アイされた私は
世界中で一番幸せ者です。

2000年10月30日

ボーっとしているうち一週間がたった。
まったくの「個人的生活」に終始してしまった。
「朗読者」という本を読み、「キッド」という映画を見る。
この前、見た映画は「ペパーミント・キャンディ」
えらいちがい。

友人から電話がある。
マルセ太郎さんのお芝居のお手伝いで、
コンサートに行けなかった旨。
マルセさんは、もっとちっちゃくなったという。
抗ガン剤の副作用。

ずいぶん前、鶯谷駅のホームのベンチで二人。
「こうしていると、クミコちゃんとホテルにでもいってきたみたいだなあ。」
「なにいってんのよ、やだなあ。」
でも、ちっともやじゃない。

一年近く前、しばらくぶりに会って、思わず抱きついてしまった。
うすくなった胸を抱きしめてしまった。
ヒトでよかった。
ヒトを抱きしめることができて。

マルセさんが元気だった頃、二人で浅草へ行った。
おっきなかき揚げをつまみながら、酒を飲んだ。
浅草演芸場やフランス座の前を通る。
「なつかしい?」ときくと
「浅草を出た芸人は、浅草がキライなんだよ。」という。
みんな戻ってなんかこないんだ。
いやな思い出が多いからね。
渥美清だって、タケシだって、みんなそう。
二人で手を組みながらフラフラ歩いてたのは
もう、いつのことだろう。

今も浅草へは思い出したように行く。
地下鉄からレトロな地下道を通るだけでキュンとする。
花やしきのひなびた観覧車に乗って、浅草の街を見下ろすと、
どこか、その辺の一室に潜んでみたい衝動にかられる。
潜んで「やさしい娼婦」にでもなってしまおうか。
楽しい。

「淫靡」なんて言葉がついて出る。
秋らしからぬ、午後。