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クミコ - ココロの扉をたたくウタ

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2004年5月7日

「怖いモノ」

ずいぶん前、「口裂けオンナ」というのが流行った。電車だかバスだかに乗っていると突然、同乗していたオンナのヒトの口がニューッと裂ける、というもので、当時の子供たちを大いに怖がらせたものだった。

そんな「怖いモノ」たちも、もうこの時代には死滅したかと思っていたところ「車内化粧オンナ」というのが出現し、その不気味さ恐ろしさは子供のみならず大人をも震撼させた。 ところがここにきてまた新手の「怖いモノ」が登場したのだ。「モノ食うオンナ」というやつで、初めて見たのは混雑した電車の入口付近。 林のように立っている他の乗客の真ん中、やはりスックと立ったまま、ひたすらメロンパンをかじっている。
ホームで、あるいは隅っこでコソコソ、というのには目が慣れていたが、そこだけ30センチ位のバリアを張り巡らせたかのように一点を見つめ、パンに食らいついている姿には、こうして描写している以上の恐ろしさがあった。

ところが、これで驚いていてはいけなかったのだ。そのわずか2、3日後のこと、昼下がりのスーパーマーケットをぶらぶらしていると、ちょうどカレー製品売り場あたり、商品を見ながら袋から引っぱりだしたパンをかじっている女性を発見してしまった。ア然としながらも、取り乱さぬよう、混乱した頭の中を整理していく。

エート、エート、「李下に冠を正さず」って諺があるよね、人に疑われることを慎むってやつ、だからこれってすごい度胸だよね、店の中で自分のパン食べちゃうんだから、でもいや待てよ、もしこのパンが店のパンだったらどうする、ヒョイと棚からパンを取ってお腹すいたからって食べちゃって、ついでにのど乾いたから牛乳も、なんて、店側だって「万引き」対策はしてるだろうけど、まさか店の中で食われちゃうなんて思ってもいないだろうし、お刺身だってリンゴだって跡形もなくその場で食べちゃったとしたら…。

どうやら世の中は大変なことになっているらしい。もはや「常識」なんてものはないのだ。 黒と白が一気に引っくり返るオセロゲームみたいに、昨日の「常識」なんて今はクソクラエらしいのだ。背筋がスーと寒くなってきた。ああ、口裂けオンナが懐かしい。

2005年5月21日

「ヒトゴト?」

「洗顔」はそんなに必要ではないのだと、小耳にはさんでから、朝、顔を洗わなくなってしまった。電子レンジでチンした蒸しタオルを顔に乗せプルプルとふくだけで終わり。自家製皮脂クリームが顔に残っているのだから、わざわざ補給することもない、そのまんま。このことを友人に話したら、あきれた顔で「クミちゃん、オンナやめちゃダメだよ」といわれた。

合理的に思えることを実践するのが「オンナやめる」ことかどうかはわからないが、オンナがヒトゴトのようになってしまっていると感じるのがオッパイだ。 「ヌーブラ」なるものを使用し始めたことが原因。仕事の性質上、どうしても背中のあいたドレスなど着ることも多いので、この新種のブラジャーが必需品となった。

プルルンとした二つの固まりは、まさしくオッパイの形そのまま。それをペッタリと自分のオッパイの上に張りつけるのだが、触り心地が、ミョーにリアルなのだ。そして、困ったことは、これを着けた途端、もうそれが自分のオッパイであることをすっかり忘れてしまうことだ。 他人と話しながら、無意識に触っていたり、ポンポン叩いていたりする。どうも口さみしさにガムをかんでいるのと同じ心持ちのような気がする。

そこで思い出すのが、以前、男友だちに聞いた「究極の選択」というやつだ。 乳首はあるけれどまったくペッタンコのオッパイと、大きいけれど乳首のないオッパイのどちらがいいか。しばらく考えた末、彼はやっぱり乳首があったほうがいいといった。乳首がなければ、それはオッパイといえないのではないか、というのだ。

「ヌーブラ」を着けたオッパイはオッパイもどきに変わり、たちまちヒトゴトになってしまう。 この不思議な感覚をみんなに味わってほしいと思うのだが、男のヒトに勧められないのが何より残念で仕方がない。