2008年11月1日
「足したり引いたり」
久しぶりに髪を切った。切った、というほどのことはないが、何だかサッパリとした。ある程度の年令になると、自分の髪質とか顔立ちとかとの折り合いがついて、そうそう冒険もしなくなる。会うたびに髪形が変わるねといわれたことなど今では信じられない。
そんな訳で「どうします」と美容師に聞かれた時も、だって仕様がないんでしょ、これしかと答えた。そのいい方にいくぶんかの投げやりを見てとったらしい彼は「そんなことないですよ」とジョキジョキ切り始める。
待ってました、である。こういう突発事件がうれしい。たとえどうなろうとたかだか髪の毛。いや、たかだかこの世のこと。なんだって来い、である。 で。できたアタマは、両サイドが長め後ろが短め。どうやらこの頃ハヤリとされるスタイルらしく、似た女性をその後少なくとも五人は見た。
ほうら、やっぱりこの世のこと、とおシャカ様の手の中みたいな落胆と安堵をしたが、そういえば最近ナニモノかをつけ加えるという作業もハヤっているらしい。「エクステ」なるものがそれで、髪の毛やマツ毛など、この前まで日本人形みたいだった人が、急にフランス人形になっていたりする。
先だって、定食屋で隣り合わせた女の子は外見に似合わず連れの男の子に食事の大切さを説きながら、私からその子の目の玉はついに見ることができなかった。目の半分以上がマツ毛で覆われていたからだった。
いいじゃん、これだって、とも思うが残念ながらメガネをかけられなくなるらしい。鼻よりマツ毛が出てしまうのだ。
足したり引いたり人間模様はかくも忙しい。