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2011年5月1日

「ともだち」という歌

今年の桜は気の毒だった。と思うのは、人間の勝手な思い込みだと重々わかっているのだが、そういわずにはいられない。

私の近所でも、見事な大木の桜が、満開の花を咲かせ、散り、青葉が繁りはじめている。毎年、この桜に「今年もありがとう」と挨拶しているのだが、それを今年はすっかり忘れていたことに気づいた。どうやら、下ばかり向いて生きているせいらしい。

「上を向いて歩こう」や「見上げてごらん夜の星を」など、かつての名曲がCMとして流れ、人々を元気づけている。ホラホラ、みんなうつむいてないで上を向こうよ、そして歩き出そうよ。そんなメッセージがダイレクトに伝わるからだろう。

作詞者の永六輔さんにいわせると、どうも気恥ずかしいらしい。二十代の頃に作った言葉だけに、青臭くてというのだ。

私は、その永さんの「気恥ずかしい」とされる作品の中の「ともだち」を唄っている。宮城県の養護施設の少女たちが、坂本九ちゃんに唄ってもらいたくて、その願いが通じ出来上がった曲ときく。

震災後、どうにも気持ちがふさぐことが多く、下ばかり向いている私のホームページに、ある日書き込みがあった。クミコさん「ともだち」唄ってください、と。「君の目の前の この僕の手に 君の手を 重ねよう ほら ともだちだ」

そうだ、そうだった。今は一人一人が、手を繋ぎ合い、重ねあい、支えあう時だった。そのために、できることをしよう。私は、まずこの歌を唄うことから始めよう。顔が少し上を向いた。

空はもう、初夏の色になっている。さあ、もう一歩、もう一歩。