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2006年12月9日

「東京タワー」

来年2月に出す予定のアルバム作りをしている。

どこのレコーディングスタジオを使うかは担当ディレクターによって異なるが、今回は東京タワーのそばになった。そばというより、ほとんど真下。小さな道を隔てたビルの地下にあるスタジオへ出入りするたび、そびえ立つ東京タワーを見上げる。

正面入り口あたりは、夜になるとキラキラと飾りつけられたツリーやベンチやオブジェなど、もうすっかりクリスマス気分。時間を決めて特別なライトアップショーもあるらしい。もう全体がいそいそしている。

ベストセラーになった本の影響もあるのだろうか、若いカップルも沢山やってきては、携帯電話のカメラを取り出している。東京タワー、クリスマス、恋人たちと、幸せの三題噺のようで、正念場のレコーディング最中でも、ふらりと気分転換に出かけては、そのおすそわけにあずかる。

今回のアルバムは1970年代の歌たちを中心にしている。日本中が右肩上がりの勢いで走った時代の歌たちは、それ以前にはなかった文学的歌謡曲やフォークソングなど、少し口ずさんでみるだけで「あの頃」が、それこそ歌の文句のように、鮮やかによみがえる。

先日の録音では、アレンジャーもミュージシャンも、はたまたレコーディングエンジニアも、その「あの頃」の歌たちをリアルタイムで作っていた人たちが集まり、さながら「同窓会」のような雰囲気になった。

今ではお腹もせり出し、すっかり白髪になったオジサンたちが、煙草をくゆらせながら弾くギターの音は、やはり紛れもない「あの頃」の音たちだった。

昭和33年生まれの東京タワーより若いディレクターは、その音たちを感に堪えぬように聴いている。

2011年に向けて新しい電波塔が建つらしい。「お古」の東京タワーはやはり寂しい。