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2009年8月2日

「“あの頃”に架ける橋」

「ヤバイ、泣いちゃいそう」

隣の男性が、そのまた隣の男性につぶやいた瞬間、音楽がスクリーンの映像と共に流れ出した。圧倒されるような「混沌」そのままの映像の終わり近く、群集が去った後に置き忘れられたプラカードらしきものに「1976」の数字が読めた。「あの頃」だった。

東京ではドーム二日間が即完売、急きょ決まった「武道館」での追加公演。やっと手に入れたチケットでそれぞれが緊張のような期待で見つめるステージに、二人はついに現れた。「サイモン&ガーファンクル」。

ガーファンクルは髪の毛がトウモロコシの先っぽみたいになっていたが、基本的にガーファンクル。サイモンはといえば、イスラエルのネタニアフ首相に似ている。改めてユダヤの血の流れを思い、その気むずかしそうな顔に時の流れを思った。

二時間あまりのステージは、おなじみの曲ばかりで、泣いちゃいそうといっていた隣の男性は、きちんとした発音で時々声を合わせる。(そうだった、若い頃は耳から覚えるからイイ感じの発音になるのだ)。そしてその男性はまた時々、鼻をすすり上げた。私も鼻をすすり上げた。

両目はじっとステージ上のサイモン&ガーファンクル。両者の間には何も入らない。みんなが直線で二人に繋がり、自分の「あの頃」と向き合っている。みんなが自分と時代の検証をしている、そんな感じだった。

「明日に架ける橋」のイントロが流れると、会場中がゴオっと鳴ったように思えた。明日が見えなかった若いあの頃と、やっぱり明日の見えない今と。いつだって明日はわからない。胸一杯の切なさでみんなが声を合わせた。