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クミコ - ココロの扉をたたくウタ

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2007年9月8日

「愛のエネルギー」

それぞれの地方で、それぞれのヘアメイクの人を頼む。たいていは、それぞれの良い仕事をしてくれて、次回もまた、ということになる。

こうして何回も行くうち、いろんなことを話し、いろんなことを聞き、いろんな人生に出会うことになる。

一見して外国人とわかる男性をアシスタントにする女性がいる。イタリア人とふんで聞いてみると南米はチリの人。それも彼女の夫であるという。ヘエエ、こりゃまたどうして、という所でその日の仕事は終わり、月日は過ぎ、またの再会。

私、追いかけていっちゃったんですよ、チリに。彼がこっちに留学してて帰国間際に出会って、アア、この人だと思って。でももう帰らなきゃっていうから。このチャンス逃したらダメだって思って、飛行機飛び乗って。

何という情熱、決断とただただ驚き、その愛のエネルギーを讃える。そうこうして次の再会。

私ね、再婚なんです。前の夫、行ってきますって朝出ていったきり帰ってこなかったんです。心臓がちょっと悪かったけど、でもそんな大事になるようなもんじゃなくて。なのにもうそれっきり、それっきりですよお。

「行ってきます」のあと「ただいま」をいえなかった人は沢山いる。「おかえり」をいえなかった人も沢山いる。

子供もね、二人いるんですけど、もう大人になったからね、もういいだろうって。この人と今一緒にならなきゃって、そう思っちゃったんですよ。

十五年間、一人で子供を育てた母親は、そうして地球の反対側に次の夫を迎えにいったのだった。

愛は突然やってくる。それは人生のチャンスと同じ、その時しっかりつかまえなきゃいけない、幸せそうな二人を見て思った。だってどっちも逃げ足だけは早いんだから。

2007年9月22日

「ピアフより長く生きて」

ここのところ「エディット・ピアフ」漬けの毎日だ。この人、日本における「美空ひばり」といってもいいシャンソン界の巨星で、彼女の人生を題材にした映画が封切られるのを前に、そのイベントに参加しているというわけなのだ。

まあ、エディット・ピアフの「前座」といっていい。上映の前に彼女の歌を6曲唄う。自慢じゃないが、ハンパシャンソン歌手の私、これまでピアフの歌をほとんど唄ってこなかった。47歳で死んだ時には、もうお婆さんに見える、そんな凄まじい人生を送った人の歌は、どうも荷が勝ちすぎている。

一番有名な「愛の讃歌」でさえ、タンゴ風にしたり、歌詞を変えたり、ささやいてみたりと、様々に唄ってはきたものの「あなたの燃える手でー」と唄い上げる、いわゆる「王道」バージョンは避けていた。

ところが今回、このイベントを機に「クミコmeetsピアフ」なるミニアルバムを出してしまった。オーケストラをバックに「心溶かす恋よー」と唄い上げてしまった。 

大向こうに叫ぶ恋なんてしたことねえよ、と斜めにかしいでいた私だったが、
やってみると案外気もちがいい。愛はやはり大声で讃えられるべきものなのかもしれない。

このイベント、札幌、名古屋が終わり、今週は福岡と大阪、そして来週が東京。ピアフの「前座」はこの間に、また一つ年をとる。これでピアフより6年も長生きしていることになる。もうコワいものなしだ。

年を重ねるにつれ、立派にハダカが見せられればいいなあ、と思うようになった。
表現者はハダカを見せる商売なので、それがブザマでもなんでも、ウムをいわせぬものであればいい。それには生き切って生き抜いていくこと、決して逃げたりしないこと。

こう書いた所で誕生日の近い同い年の「アベくん」のことを思いだした。まだまだこれからだよ人生は、ね、アベくん。