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クミコ - ココロの扉をたたくウタ

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2008年2月9日

「あやうい国、日本」

去年、初めてパリに行った時に一番感動したこと。それはエッフェル塔を見たことでも、セーヌ川を渡ったことでも、ノートルダム寺院に入ったことでもなかった。

地元の人に案内されたレストラン。特に高級店でもない普通の街の「メシ屋」。注文した料理が次々と出て来る。

と、シェフがフランス地図片手に現れた。私の目の前にババッと広げ、この豆はここら辺で、この肉はここら辺でと、それぞれの産地を指し示す。誇らし気な横顔を見ながら、ただホウホウとうなずく。言葉は皆目わからないが、ただならぬ熱気が伝わってくる。心底うらやましい国だと思った。フランスは「強い国」だと思った。

その時に日本の食糧自給率がどの位だったかは知らなかった。でも日本の街のメシ屋でこれはどこで、これはどこで、と外国人に熱く語る調理人も知らなかった。

帰国してから、このことがずっと気になった。この国は大変なことになっているような気がした。

案の定、それからしばらくして40パーセントを割った食糧自給率が発表され、訳のわからぬ偽装が続き、今年に入ったらついに「毒入り餃子」まで現れた。一国の衰退の歴史絵巻的展開だ。

食料やエネルギーをこれだけ他国に頼っている国に住む怖さが背筋を上ってくる。ここまで楽観的な政治をしてきた人たちへの憤りで頭が熱くなる。

昔、何もわからぬ子供の頃、添い寝しながら父親がいった。あの戦争はねえ、アメリカが日本に意地悪して、それまで送ってくれてた石油がストップしたから日本が困って、だから始まったんだよ。

もう父親も忘れている話だろうが、でもこの国が「あやうい国」であることは全く変わっていない。いや、昔よりずっとずっと「弱い国」になっているのかもしれない。

2008年2月23日

「ポイントカードの呪縛」

ポイントカードが苦手だ。ホラホラ、おんなじもん買うんならウチに来て下さいよ、ポイントたまりまっせ、得でっせ、というシタゴコロが透けている。

ところが近頃では、どこでもかしこでも、何かというとポイントカードをくれるので、サイフの中がポイントカードだらけになる。

こんなものいらん、といちいち拒否するのも面倒くさい。ま、いいかともらっているうち、どれがどこのカードだかわからなくなり、そのうち何かの拍子にドサッと一気にサイフの外へ崩れ落ちる。拾うのも大変だ。

少しでも得しようとする、その心持ちがいかんのだと捨ててみたら楽になった。これからはどこの店に行ってもいいのだ。ポイントカードのせいで、あっちへこっちへと惑わなくて済む。その場その場で気ままに買えばいい。ポイントカードの呪縛から抜け出せたようなサッパリした気分で、メシ屋に入った。

「サバの塩焼き定食」。青魚なんてホントは好きでもないけど、この年になればまずは健康第一とビールをチビチビやりながら待つ。が、どういうわけかなかなか出てこない。後から来た客の「おろしロースカツ定食」や「漬けまぐろ定食」や「鶏のそぼろ煮定食」は運ばれてくるのに、私の前にはお茶とお箸だけ。サバの焼ける匂いだけがする。手持ちぶさたで仕方がない。

と、隣のテーブルを片づけていた店の若い男の子が、そんな私を見てニコッと「もうちょっとでできますからね」

やっと出て来た「サバの塩焼き定食」を米一粒残さず平らげ勘定を払おうとすると、その優しい若者が「ポイントカード持ってます?」

エ、メシ屋のポイントカード、耳を疑う私に彼は益々優しく「よく来て下さるお客様は持っていたほうが」

こうして「定食屋ポイントカード」をサイフにしまった私は、またちょっと気が重くなりながら、店を後にしたのだった。