2008年6月7日
「放っておいて、ごめん」
街がキレイになるのは、それはいいことに違いないんだろうが、本当に本当にいいことなんだろうか。
行く先々の地方都市で、キレイになった道、キレイになった町、キレイになった橋なんか見てるとどこもおんなじに見える。自分が今どこにいるのかわからなくなる。
私は元来スキマが好きなので、路地裏や裏道を嗅いで歩く。そこにしかヒトの匂いがしないからだ。そこで育った、そこでしか嗅げない匂いがあるからだ。でもそのスキマはどんどんなくなっていく。
大阪には大阪の匂いがあった、と思う。スキマだらけの居心地のいい、そこだけの匂いのある場所がミナミあたりにはゴマンとあった、と思う。
そのミナミに久しぶりに行った。戎橋が新しくなったと聞いてはいたがタカをくくっていた。見て驚いた。バルコニーみたいなもんがくっついている。ガシャガシャと鍵みたいなもんもついている。グリコの兄ちゃんは相変わらず両手を上げて走っているが、喰いだおれの太郎はもう去っていくらしい。道頓堀の川面が悲しく光った。
ああ、こんなことになっていたんだ。毎年大阪に来てはいたけど、このあたりにはご無沙汰してしまっていた。ずっとほったらかしにしていた古女房に詫びる気持ちで歩く。法善寺横丁から水掛け不動さんへ。「夫婦善載」の店先がやけに眩しい。背を丸めて向かい合う蝶子と柳吉もすっかり遠くに行ってしまったのだ。
そんなこんなで今週の土日に「シアタードラマシティー」でコンサートをします。ここはキタ。ミナミ、ごめんね。