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クミコ - ココロの扉をたたくウタ

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2006年6月10日

「パリから来た女」

行きつけの美容院に入ると、店長がニコニコして「Hさん、来てますよ」という。Hさん?Hさんというのは、もしかしてあの「Hちゃん」のことかと指さす方を見ると、確かにそのHちゃんがいる。

もう6年前になる。カタロニア民謡「鳥の歌」を唄いに行けという突然の指示で訳のわからぬまま出かけたスペイン。そこで大層お世話になったHちゃんがどういう訳か今ここに座っているのだった。

日本人だから日本にいても不思議はない。どこに住んでるのと尋ねると「パリ」。何てこった、スペインの次はパリか。聞けば「サンジェルマン・デ・プレ」という、いかにもパリらしい、シャンソンにも度々登場する街にいるという。行ったこともないのにサンジェルマン・デ・プレが目に浮かぶ。フランスパン小脇に石畳を歩くベレー帽のおじいさんまで浮かぶ。

そりゃ、いくらなんでもステレオタイプだろうと自分の想像力の貧しさにゾッとしながらHちゃん、オトコはどうしたと聞くと、今の恋人はモロッコにいるベルベル人だという。惑星のような名前の人種が世の中にはあるのだ。やはり世界は広い。

そういえば友人のアーティスト、ヤドランカさんはクロアチア人だが、お父さんお母さん、お祖父さんお祖母さんとたどれば、イタリアだのロシアだのオーストリアだのドイツだのと、すさまじい血の混ざりかた。これがヨーロッパでは普通というのだから、どうして国同士の戦いが起きるのか逆に不思議になってしまう。

パリのオトコにモテる髪にして、と注文したHちゃんの頭は、デジタルパーマのセットで固定され、あと1時間はかかるという。完成形を見ないまま別れてしまったせいか、それからどうも落ちつかない。出不精の私が、どうしたことか広い海の向こうへ飛んでいきたくなっている。