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クミコ - ココロの扉をたたくウタ

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2011年7月3日

「ずっと忘れない」

「カタチあるものはいつかなくなる」と、物の道理でわかってはいても、実際に目の当たりにすると、その衝撃は大きい。6月11日、大震災から3ヶ月。石巻を再び訪れた。私の中では、石巻は「あの日」のまま止まってしまっている。何としてももう一度行かねばという思いと、このまま一生行けないという思いが、ずっと交錯していた。

その私の背中を押してくれたのが、当の石巻の方々で、暖かい眼差しと「ありがとう」の言葉に、どちらが「ありがとう」だかわからず、ただただ号泣した。震災から3ヶ月の復興をアピールするこのコンサートで唄えたことは、本当にありがたいことだった。私自身が救われた気がした。それも、もっともっと傷ついた方々によって。

3月11日に公演するはずだった市民会館の地下楽屋。そこに埋もれたままだった荷物たちとも再会した。ほぼ同じラインで変色したドレスや背広など、生々しく、心臓がキュッとする。

中でも驚いたのがパソコン。最新の薄型式のやつ。恐る恐る開けると、キーボードがチョコレートになっている。ここまでくるともうオカシイ。笑ってしまう。

私が失ったモノなど、このようにタカがしれているが、海辺のガレキ(この表現もはばかられるが)の中に立つと、多くの人の思いが、その中から立ち上がってくるようで息が詰まる。一つ一つのガレキと称されるモノたちには、かつてそれらを愛した人々がいる。何千何万の思いが、すっかり広く大きくなった空を渡る風に乗り耳に届く。

「忘れないでね」。モノは消えても心は残る。跡かたもなくなったこの地に、また人の笑い声が戻る日まで。もちろん。「忘れません」とも。