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クミコ - ココロの扉をたたくウタ

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2010年4月4日

「唄うセールスマン」

「朝起きて、窓をガラッと開けるでしょ、その時、魚の匂いがすると途端にガックリきちゃうんだよね」こういうと魚好きの友人は叫んだ。シンジラレナイ! あんな良い匂いってないよ!

シンジラレナイのはこっちのほう、どう見てもアジの開きの匂いよりコーヒーにハムエッグの匂いのほうが、朝の清々しさにはふさわしいに決まってる、と力説しみてもムダなこと。ことほど左様に人の好みというのは大概に分かれるものなのだ。どちらが良いも悪いもない。

そんな訳で、人というものはまったく違うのだと頭ではわかっているのだが、これが音楽の好みとなると、もう「謎」に近い。何だってアンタこの歌がそんなに好きなの、この歌のどこがいいの、というような理解不能な歌であったにしても、身を震わせ心をしぼりカラオケで熱唱する姿を見れば、ただ呆然。

逆に、アンタ何が楽しくてそんな歌唄ってんの、その歌のどこがいいの、といわれても返す言葉はない。両者の間には「深くて広い河」がとうとうと横たわっているのだ。

時々、公開放送などで様々な方とご一緒すると、この違いはまさに一目瞭然になる。もちろんすべてを楽しんで聴いている人もいるが、そうでない場合。歌の「原理主義」みたいな人の場合。これはなかなかにシンドイ。

さっきまでちぎれるほどに振られた団扇やペンライトをさっさとしまい、目前の私を能面のように見る。中には目をそらす人もいる。異人のような心細さが襲う。

あのですね、この歌もホラこうして聴くとなかなかにいいもんでしょう、ちょっとお耳傾けてくださいな、ね、どうですか。異人はこうしてセールスマンになる。まさに心の扉を叩く「唄うセールスマン」だ。河を渡るにはこれしかない。